蒼夏の螺旋

   “駆け足な秋に感じることは”
 


昨年は西日本がそりゃあ苛酷な夏だったのが、
今年は東日本が冗談はよせという酷暑になって。
猛暑日や熱帯夜が当たり前に連続しもし、
何ともうんざりした夏だったが、
そのまま九月も残暑という形で引き摺るかと思いきや、
その九月が訪れる前に、
何に追われてのことだろかと思えたほどに、
そそくさと去ってった炎暑であり。
いやいやいや、これで終わりのはずはない、
油断させといて、半袖を仕舞ったところを見澄まして、
残念でしたと凄まじい残暑がやっぱり始まるんだよ・きっと、と。

 そうそう騙されるもんかなんて、
 何を相手にか、疑ぐり深くも身構えていたものの

さすがに昼の間は気温も上がったし、
陽なかに長居をしようものなら ちりりと暑くもなったれど。
朝晩はどんどんと肌寒さを増してゆき、
しかも結構な大雨が続いて、それごとに地上から熱が奪われたものか、
暑さ寒さも彼岸までなんてどころじゃあない、なんて
例年だったら苦笑が漏れたはずが、
この秋だけは“その通りでございます”と思えたほどで。

 “うん♪ 俺は大歓迎だな、こういうのvv”

蒸し暑いのは鬱陶しくてかなわないけど、
でもでも、天気がよかったり空が青かったりするのに誘われて、
何とも気持ちがむずむずして、体を動かしたくなって。
そこは ちいとも嫌いじゃあなかったし、
泳げればなぁって
そこが弱点なのがともかく口惜しくてなんなくて。
だから、今頃の昼間のカラッとした暑さはすごい好きだ。
まだまだ ちっとは夏の名残りがあるのか、
ずっと照らされてると
背中とかシャツ越しでもヒリヒリしても来るけれど。
蒸し蒸ししないからかな、日陰に入れば すぐ涼しいのが助かるし、
そんな風に 体を動かしても気持ちいいままだから
ホント、嬉しいったらなくてサvv

 『そういや小学校の運動会にご招待されたんだってな。』
 『おうよっ。』

ここいらって微妙に新興地だからか、
駐車場と空き地だったところにいきなり分譲住宅が幾つも出来たよな、
そんなブロックとかあったりっていう、
何とも目まぐるしい時期もあったのが ここんとこは何とか落ち着いて。
そうなると微妙に子供の人口も増えたのか、
マンションの1階のパソコン教室に外から通って来る子とか、
発足当時は結構混ざってたのが、
最近ではマンション組の子ばかりになってたサッカーチームに
やっぱり外から加入する子とかが増えて来て。
そんな顔触れで 夏祭りに出掛けたり、
そのまま近所の大川沿いの花火大会に行ったりするうち、
親同士にも行き来が出来るようになったついでのようなもの、
パソコン講師の、一見 子供みたいなお兄さんが、
子供らへの面倒見のよさから 親御へも人気を博すのに時間は掛からずで。

 『そいでサ、父兄参加の
  綱引きの頭数合わせとリレーのアンカーすんだぞvv』

 『アンカーって…。』

大役じゃねぇかそりゃと、ゾロも呆れたみたいだったれど、
親御の中には“運動はちょっと”というクチも少なからず居ようから、

 『これほどの逸材じゃあ
  残念だが しょうがないと言いながら、
  その実 喜んで譲るのへのいい口実になってんじゃね?』

 『? なんだそりゃ?』

運動好き好きなお前にゃ判らんだろサと、
剣道バカに言われちまったのが癪だったけれど。(笑)

 「………。」

この時期の何が好きかって、
一番“うわいvv”ってなるのは やっぱ、
朝 何とか頑張って起きたときとかかなぁvv
ちょっと肌寒くって、でも、
半袖でも全然のまったく だいじょーぶで。
布団だってまだ薄いほうの羽毛だけど、
元気よすぎて蹴飛ばしてもなくの、
ぬっくぬくなところへ ちょうどよく収まってるって判るとサ。
意識しないうちから、口許が“にへら”って にやけて来ちまう。
頭とか肩口だけじゃなくて、
剥き出しの腕とか背中とかも、全部全部一緒くたに くるんって、
それは大っきなゾロの懐ろに掻い込まれているからで。

 “おいおい、俺は抱き枕じゃねぇぞ”

ごつごつの腕や胸板は武骨の極みで。
間近になってた男臭い顔へ、胸のうちで言ってやる。
何の夢を見てるんだか、不揃いな眉をギュッと顰めてて。
この俺がこんな傍に居るんだのに、何が不満なんだ おいとか。
そりゃあ居心地のいい、甘ったるい温かさが気持ちいいの、
すんなり認めるのは ちと癪だから。
それを少しでも誤魔化すように、
そんなこんなを誰へともなく主張してから、

 「さ・て・とっ♪」

こんな朝のまろやかな温みは、
例えて言うなら、
底の見えないカップに満たされた蜂蜜入りのミルクティー。
甘くて甘くて美味しくてキリがなくって、
自分でえいと踏ん切らなくちゃあ、
甘党にはなかなか手放せないから困りもの。
ああこれからは こういう朝ばっか来るのか チクショーめとの悪態半分、
そぉれとベッドから跳ね起きた、小さな奥方だったれど。
でもでも、幼いお顔には
“にししvv”というご満悦な笑みが目一杯たたえられてもいて。
何の歌だか、鼻歌交じり、
ご亭主のをぶん捕った
ぶかぶかパジャマの肩が何度も何度もずり落ちるのを戻しつつ、
今朝は何を作ろうか、まずは温かいみそ汁だなと、
袖を引き上げての腕まくり。
キッチンへ向かった小さな奥方を、
こそりと薄目を開けながら見送る、頼もしい旦那様の見解は、

 “…まあ何だ、ああまで掻い込んでも
  暑いだろうがと蹴られなくなったら秋だなぁってことだよな。”

いやはや、放射冷却もぶっ飛ぶ甘さで、
朝も早よから御馳走様ですvv




     〜Fine〜  14.10.07.


  *台風一過で、いいお天気になるのは判っておりましたが、
   その前哨戦か、朝はずんと冷え込みましたね。
   これからしばらくはこの気温差が続くんでしょうね。
   油断して風邪を拾わぬよう、温かくしておやすみを♪


ご感想はこちらvv**めるふぉvv

**bbs-p.gif


戻る